クローン病の食事ガイド|毎日の食べ方で体調管理をサポート
「クローン病って、結局なにを食べたらいいの?」そんな疑問を持つ方はとても多くいらっしゃいます。
症状を悪化させたくない一方で、過剰な食事制限はストレスにもなり、栄養不足を招いてしまうこともあります。
クローン病と上手に付き合っていくためには、自分の体調や生活に合った“食事との向き合い方”を見つけることが大切です。
今回は、クローン病の基本的な食事の考え方から、実際の工夫、注意点まで、東京新宿RENACLINICが分かりやすく解説します。
目次
- クローン病における食事療法の基本方針
- 活動期・寛解期で異なる食べ方のポイント
- 食材の選び方と調理のコツ
- よくある質問と食事Q&A
- 毎日続けるためのサポートと工夫
1. クローン病における食事療法の基本方針
クローン病は、消化管に慢性的な炎症を引き起こす病気であり、症状の悪化を防ぐためには「食事の工夫」が非常に重要です。基本的には以下の4つを意識した食事が推奨されます。
1つ目は低脂肪です。脂質は腸に刺激を与える可能性があり、炎症を助長するリスクがあります。揚げ物や脂の多い肉、加工食品はなるべく控えるのが基本です。
2つ目は低残渣(ていざんさ)。これは腸に残りにくく、消化に負担の少ない食材を選ぶという考え方です。食物繊維が多い食品(きのこ、海藻、ごぼうなど)は、特に症状が強い時期には避けた方がよいとされています。
3つ目は高カロリー・高たんぱく。病状が進行しているときや食事量が少ないときは、体力や栄養を維持するために、カロリーとたんぱく質をしっかり摂取する必要があります。例えば、白米、おかゆ、鶏ささみ、白身魚、豆腐などは有効です。
4つ目は刺激の少ない調理です。香辛料、アルコール、カフェインなども症状を悪化させる要因となり得ますので、過度な刺激物は避けるのが賢明です。
2. 活動期・寛解期で異なる食べ方のポイント
クローン病の食事療法は、体調の変化に応じて柔軟に対応することが大切です。特に「活動期」と「寛解期」では、食べ方に明確な違いがあります。
活動期(症状が強く出ている時期)では腸の炎症が強く、下痢・腹痛・食欲不振などの症状が目立ちます。
この時期は「腸を休ませる」ことが食事の目的です。柔らかく煮たおかゆ、うどん、具の少ないスープ、豆腐、白身魚など、消化に優しく脂質が少ない食品を中心に食事を構成します。
必要に応じて、栄養補助食品や成分栄養剤を活用する場合もあります。
寛解期(症状が落ち着いている時期)になると、ある程度バリエーションのある食事が可能になります。
ただし、いきなり以前のような食事に戻すのではなく、少しずつ食材を増やし、体調の変化を確認しながら調整していくことが重要です。
脂質や食物繊維は控えめにしつつ、良質なたんぱく質や炭水化物、必要なビタミン・ミネラルをバランスよく取り入れるよう心がけましょう。
また、食べる量や時間を一定に保ち、1日3食をなるべく同じ時間帯に摂ることで、腸内リズムが整いやすくなります。
3. 食材の選び方と調理のコツ
クローン病の食事で悩みがちなポイントの一つが「どんな食材を使えばいいの?」ということ。ここでは、食材と調理法の工夫をご紹介します。
まず、タンパク質源としておすすめなのは、鶏ささみ、白身魚(たら、かれい)、豆腐、卵(半熟や茶碗蒸しなど)などです。
これらは低脂肪で消化しやすく、体力を維持するうえで役立ちます。
炭水化物は、白米やおかゆ、食パン(バターなし)などが基本です。
玄米や全粒粉パンなどの繊維質が多い食品は、症状がある場合には避けましょう。
野菜は、加熱して柔らかくしたものを中心に。にんじん、かぼちゃ、じゃがいも、白菜などは、スープや煮物にして取り入れるとよいでしょう。
きのこや海藻、ごぼうなどの不溶性繊維を含む食材は、症状が安定するまでは控えるのが無難です。
調理法は、「煮る」「蒸す」「焼く(油を使わない)」が基本。炒め物や揚げ物は控えめに。油を使う場合はごく少量の植物油(オリーブオイルなど)を使用しましょう。
また、一度にたくさん食べず、分けて食べることで腸への負担を減らすこともできます。しっかり噛んでゆっくり食べることも、消化の助けになります。
東京新宿レナクリニックでは、こうした具体的な食材選びと調理アドバイスも、管理栄養士が丁寧にサポートしています。
4. よくある質問と食事Q&A
ここでは、患者さまからよくいただく食事に関する質問とその回答をいくつかご紹介します。
- 牛乳やチーズなどの乳製品はダメですか?
A. 乳糖不耐症がある場合、牛乳で下痢を起こすことがあります。症状が出るようなら避けるか、乳糖を除いた製品(乳糖分解乳やヨーグルト)を試してみると良いでしょう。 - 甘いものは食べていいですか?
A. 症状が安定していれば、脂質が少ないゼリーや寒天、おかしなどはOK。ただし、チョコレートや生クリーム系は脂質が多いため控えるのが安心です。 - 外食はしてはいけない?
A. 活動期には避けるべきですが、寛解期であれば、脂質や刺激の少ないメニューを選べば外食も可能です。和食中心の定食などは選びやすいでしょう。 - 食事だけで栄養は足りますか?
A. 食欲がない時や摂取制限が多い時は、成分栄養剤やサプリメントを併用することもあります。独自判断ではなく、医師と相談して取り入れるのが安心です。 - 食事記録って必要ですか?
A. とても有効です。食べた物と体調を簡単に記録することで、自分に合う・合わない食材が見えてきます。
5. 毎日続けるためのサポートと工夫
クローン病の食事療法は、継続が何より大切です。しかし「ずっと制限するなんて無理」と感じるのは当然のこと。ここでは、毎日続けるためのちょっとしたコツをお伝えします。
まず、完璧を目指さないこと。基本を守りながらも「7割できればOK」と考えるだけで、気持ちがぐっと楽になります。
次に、レシピの工夫。たとえば、豆腐ハンバーグ、野菜スープ、おかゆアレンジなど、見た目や味を楽しめるような料理を取り入れると、飽きずに続けやすくなります。
体調に波があることを前提にするのも大切です。症状が良い日は食材を少し増やし、悪い日は無理せず柔らかいもの中心に戻す、という柔軟な対応が重要です。
また、食事日記や体調メモを活用して、自分の「OK食材リスト」を作っておくと便利です。これがあると、旅行や外食のときにも安心して選択できます。
まとめ
クローン病の食事管理は、病状のコントロールと生活の質の向上に直結する大切な要素です。「食べちゃいけない」と思い込まず、「どう食べるか」を考えることがポイント。無理な制限よりも、体調に合わせた工夫が重要です。症状のある時期と落ち着いている時期では食べ方を調整し、無理なく続けられる方法を見つけましょう。東京新宿レナクリニックでは、患者さまの食事管理が「続けられる」ように、管理栄養士・医師が一体となって支援します。
監修医師 大柄 貴寛
国立弘前大学医学部 卒業。 青森県立中央病院がん診療センター、国立がん研究センター東病院大腸骨盤外科など、 日本屈指の高度な専門施設、クリニックで消化器内視鏡・外科手術治療を習得後、2024年東京新宿RENA CLINIC開院。