「便秘が続くと痔になる」「痔の人は便秘に気をつけて」
よく聞くけど、実際なぜ関係あるの?と思ったことはありませんか。
便秘も痔も、日本人の多くが悩まされる“おしりトラブル”の代表格。特にデスクワークや運動不足、食生活の乱れなど、現代人の生活は便秘になりやすい環境です。そして便秘が続くことで、肛門まわりに大きな負担がかかり、痔を悪化させてしまう原因になることが知られています。
今回は、「便秘がなぜ痔に悪いのか」を医学的な視点でやさしく解説。便秘対策と痔予防のコツもお伝えします。おしりの健康を守る第一歩として、ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
- 痔ってどんな病気?種類と原因を知ろう
- 便秘が痔を悪化させる3つのメカニズム
- 便秘・痔を悪化させないための生活改善
- 薬や食事でできる便秘・痔ケアの実践法
- まとめ
1. 痔ってどんな病気?種類と原因を知ろう
多く見られる痔は大きく以下の三種類です。
- 内痔核(ないじかく):肛門の内側の血管がうっ血・腫れてできるいぼ痔
- 外痔核(がいじかく):肛門の外側の血管が腫れたり、血栓ができるタイプ
- 裂肛(れっこう):硬い便で肛門の皮膚が切れる切れ痔
これらの共通点は「血流の悪化」「圧力のかかりすぎ」「炎症」です。便秘によって排便時に強くいきむことや、硬い便が肛門を傷つけることが、こうした症状の原因になります。
また、長時間の座位や冷え、妊娠出産なども血流を悪くして痔を起こす要因に。
つまり、便秘は“痔の直接的なトリガー”にも、“慢性化を助長する隠れ原因”にもなりやすいのです。
2. 便秘が痔を悪化させる3つのメカニズム
では、なぜ便秘が痔を悪化させるのでしょうか?主に次の3つのメカニズムが関係します。
① 排便時の「いきみ」による圧力上昇
便秘で硬い便を出そうとすると、どうしても力む時間が長くなります。その結果、肛門の静脈に強い圧力がかかり、血液がうっ滞。血管が膨張して痔核(いぼ痔)が悪化する原因となります。
② 硬い便による物理的刺激
硬い便が肛門粘膜を通過する際に、小さな裂傷が起きやすくなります。これが裂肛の原因です。さらにその傷が慢性化すると、排便時に激痛を伴い、「痛みで排便を我慢→さらに便が硬くなる」という悪循環に。
③ 長時間の便貯留による血流低下
便が長時間腸内に留まると、骨盤周囲の血流も滞りやすくなります。特に座りっぱなしの生活では肛門部のうっ血が進み、痔核が腫れやすくなります。
このように、便秘は“物理的負担+血流障害+炎症リスク”という3重苦で痔を悪化させるのです。
3. 便秘・痔を悪化させないための生活改善
痔の予防・改善には、毎日の生活習慣がとても大切です。東京新宿レナクリニックでは、次のような指導を行っています。
水分摂取を意識する
便秘の大きな原因の一つは「水分不足」。朝起きたらコップ一杯の水を飲むだけでも腸が刺激されます。1日1.5〜2Lを目安にこまめに摂りましょう。
食物繊維を“バランスよく”摂る
「食物繊維」といっても、水溶性(海藻・オートミール・果物)と不溶性(野菜・豆類)があり、両方をバランスよく摂ることが重要です。不溶性ばかりだと逆に便が硬くなるので注意が必要です。
適度な運動
デスクワークでお尻が冷えがちな人は、1日30分程度のウォーキングやストレッチで血流改善をしましょう。
便意を我慢しない
「今トイレに行く時間がないから…」という我慢が便秘悪化の始まり。自然な便意を逃さないことが大切です。
東京新宿RENACLINICでは、こうした生活指導に加え、必要に応じて便秘治療薬や痔の外科的治療も組み合わせた総合的なケアを行っています。
4. 薬や食事でできる便秘・痔ケアの実践法
便秘と痔の両方を改善するには、「薬に頼る」よりも「正しく薬を使う」ことが大切です。
便秘薬の使い方
- 酸化マグネシウム系:腸内で水分を引き込んで便を柔らかくする。痔の人にも安全性が高い。
- ルビプロストン/リナクロチド系:慢性便秘に使われる新しいタイプの薬で、自然な排便を促す。
- 刺激性下剤(センナ・ビサコジルなど):短期間のみに。長期使用は腸が慣れてしまうため注意。
食生活のポイント
- 朝食を抜かない:胃結腸反射が働き、自然に便意が起きやすくなります。

- 発酵食品(ヨーグルト・納豆・味噌)を取り入れる。腸内環境を整える効果が期待できます。
- 過度なアルコールや香辛料は痔を悪化させるため控えめに。
また、便秘を放置すると「血栓性外痔核」「裂肛」「肛門周囲膿瘍」など合併症のリスクが上がります。違和感が続く場合は我慢せず、専門医に相談を。
まとめ
便秘は「痔の原因」であり「痔を悪化させる最大の敵」です。排便時のいきみ、硬い便による肛門への刺激、血流の滞りなど、便秘は痔のあらゆる悪化要因につながります。
生活習慣の見直しと正しい排便ケアで、多くの痔は改善・再発予防が可能です。
食事・水分・運動・排便リズムを整えることで、痔のつらい症状から解放される方も少なくありません。
東京新宿レナクリニックでは、便秘や痔にお悩みの方へ、内科・肛門外科両面からのアプローチでサポートを行っています。おしりの不調が続く方は、ぜひお気軽にご相談ください。
監修医師 大柄 貴寛
国立弘前大学医学部 卒業。 青森県立中央病院がん診療センター、国立がん研究センター東病院大腸骨盤外科など、 日本屈指の高度な専門施設、クリニックで消化器内視鏡・外科手術治療を習得後、2024年東京新宿RENA CLINIC開院。
参考文献
- Bharucha AE et al. “An Update on the Pathophysiology and Management of Chronic Constipation.” Gastroenterology, 2019.
- Sun WM et al. “Pathophysiology of rectal evacuation in patients with hemorrhoids.” Gut, 1990.
- Riss S et al. “The prevalence of hemorrhoids and chronic constipation: an epidemiologic study.” Techniques in Coloproctology, 2012.
- Wald A et al. “Chronic constipation: advances in management.” The Lancet Gastroenterology & Hepatology, 2021.


