「食中毒って夏だけじゃないの?」と思っている方、多いのではないでしょうか。実は、冬にこそ注意したい食中毒もあるんです。特にノロウイルスは寒く乾燥した季節に活性化し、11月~3月にかけて患者数がグッと増加します。さらに、煮込み料理やおせち料理など、冬ならではのメニューにも食中毒リスクが潜んでいます。この記事では、冬に多い食中毒の原因や特徴、そしてご家庭でもできる予防策を、わかりやすく解説します。
目次
- 冬の食中毒はなぜ増える?主な原因と背景
- ノロウイルスだけじゃない!冬に多い食中毒の種類
- 自宅でできる!冬の食中毒予防の基本とポイント
- 症状が出たらどうする?家庭での対応と受診の目安
- まとめ|冬も油断せず、安心・安全な食生活を
1. 冬の食中毒はなぜ増える?主な原因と背景
「冬に食中毒?」と意外に思われるかもしれませんが、実は冬場の感染性胃腸炎の原因の多くは食中毒、特にウイルス性によるものです。
代表的なものがノロウイルス。空気が乾燥し、気温が低下することでウイルスが長時間生存できる環境が整い、感染が拡大しやすくなります。
さらに、冬は年末年始や集まりの多い時期。大人数分の食事を前もって準備したり、温かい料理をテーブルに長時間出しておいたりすることが多くなります。
これにより、調理後の食品が常温で放置され、細菌が繁殖しやすい状況になるのです。
また、家庭内での感染も多く見られます。一人が感染すると、トイレやキッチンなどを介して家族全体に広がるリスクも。
冬は風邪やインフルエンザと症状が似ていることもあり、見逃されやすいのも特徴の一つです。
2. ノロウイルスだけじゃない!冬に多い食中毒の種類
冬の食中毒というとノロウイルスがよく知られていますが、実はそれ以外にもいくつかの原因があります。
ノロウイルスは特に11月~3月に多く見られ、感染力が非常に強く、わずか数個のウイルスでも感染してしまうほど。
生牡蠣などの二枚貝が感染源になることが多いですが、調理者の手指や調理器具を通じた「二次感染」も多いです。
一方で、ウェルシュ菌という細菌にも要注意。冬の煮込み料理やカレー、シチューなどを一晩常温で放置することで、菌が増殖し、食べた翌日に腹痛や下痢を引き起こすケースがあります。加熱しても芽胞という耐熱性の構造が残るため、再加熱では完全に除去できないこともあります。
カンピロバクターも鶏肉の加熱不十分やまな板の使い回しなどから感染する代表的な細菌です。
こちらは季節を問わず発生しますが、冬でも油断は禁物。特に家庭での調理時に生肉の取り扱いが雑になると、感染リスクが高まります。
食中毒はその原因により症状も異なりますが、共通するのは「急激な嘔吐・下痢・腹痛」。これらの症状が出たら、自己判断せずに早めに医療機関に相談することが大切です。
3. 自宅でできる!冬の食中毒予防の基本とポイント
冬の食中毒予防には、「家庭での対策」がとても重要です。まず基本となるのは、手洗いの徹底。
特にトイレの後、調理前後、食事の前には、石鹸と流水で30秒以上しっかり洗うことが推奨されます。アルコール消毒では不十分なウイルスもあるため、水と石鹸での洗浄が基本です。
次に、食品の加熱です。ノロウイルスは90℃で90秒以上の加熱で不活化されます。
特に牡蠣などの貝類を加熱調理する際は、中心部までしっかり火を通すようにしましょう。また、煮込み料理やおでんなど、作り置きの食品は保存にも注意が必要です。
一晩常温で放置するのは避け、食べる前には再加熱するなど工夫が必要です。
調理器具の衛生管理も大切です。生肉や魚を扱った包丁やまな板は、使用後すぐに洗浄・消毒を行いましょう。
とくにカンピロバクターなどの細菌は非常に少量で感染するため、交差汚染のリスクを抑えることが求められます。
吐しゃ物や下痢便の処理方法も家庭内感染を防ぐカギです。マスク・手袋を着用し、処理後は塩素系消毒液でしっかりと消毒しましょう。
布類は洗濯前にビニール袋に密封し、感染拡大を防ぎましょう。
東京新宿RENACLINICでは、こうした家庭での予防策を患者さまへ丁寧にご説明し、ご家族全体での感染対策をサポートしています。
4. 症状が出たらどうする?家庭での対応と受診の目安
万が一、食中毒が疑われる症状が出た場合、まずは落ち着いて対応することが大切です。症状は「急な吐き気、下痢、腹痛、微熱」などが一般的。特にノロウイルスでは、突然の激しい嘔吐や水様便が出るケースが多く見られます。
最優先すべきは脱水症状の予防です。嘔吐や下痢が続くと体内の水分と電解質が急速に失われるため、経口補水液やスポーツドリンクなどでこまめに水分を補給しましょう。
ただし、無理に飲ませると嘔吐を誘発する場合もあるため、少量ずつゆっくり摂取するのがポイントです。
無理に食事を取る必要はありません。胃腸が落ち着くまで数時間~半日は絶食にし、回復を見ながら消化に良いおかゆなどから再開すると良いでしょう。
以下の症状が見られた場合は、早急に医療機関を受診してください。
- 高熱が続く
- 血便が出る
- 嘔吐や下痢で水分が全く取れない
- 乳幼児や高齢者で元気がなくぐったりしている
感染症の種類によっては抗菌薬の使用が必要な場合もあるため、自己判断で市販薬を使用せず、医師の診断を仰ぐことが大切です。
5. まとめ|冬も油断せず、安心・安全な食生活を
冬の食中毒は、乾燥・低温・年末年始の食生活など、さまざまな要因でリスクが高まります。ノロウイルスやウェルシュ菌、カンピロバクターなどは家庭内での調理や管理次第で防ぐことが可能です。手洗い、加熱、器具の衛生管理をしっかり行い、体調不良時には早めの水分補給と医療機関への相談を心がけましょう。
監修医師 大柄 貴寛
国立弘前大学医学部 卒業。 青森県立中央病院がん診療センター、国立がん研究センター東病院大腸骨盤外科など、 日本屈指の高度な専門施設、クリニックで消化器内視鏡・外科手術治療を習得後、2024年東京新宿RENA CLINIC開院。