「また胸がムカムカする…」と、つい薬を飲んで済やりすごしていませんか?ただの胸やけだと思っていても「長く続く」「頻度が高い」場合には、見過ごせないサインの可能性があります。特に、胸やけの背景には胃酸の逆流や胃粘膜のダメージが潜んでいて、それがゆくゆくは胃がんなどの重い病気につながることも。今回は、なぜ胸やけが続くと注意が必要なのか、胃がんと並行して知っておきたいこと、そして「どうすれば早めに気づけるか」をご紹介します。定期的に胸やけが起きている方、気になる方は、ぜひ最後まで目を通してみてください。
目次
- 胸やけが「続く」ってどのくらい?そのメカニズム
- 胸やけが長引くとどうなる?胃・食道への影響とは
- 胃がんとの関係—続く胸やけはリスク要因?
- 胸やけを放置しないための日常ケア・受診のタイミング
- まとめ
1. 胸やけが「続く」ってどのくらい?そのメカニズム
胸やけとは、胃の中の酸や消化酵素が食道に逆流して、胸部やみぞおちあたりに焼けるような痛みや不快感を生じる症状を指します。頻繁に起こる場合、胃食道逆流症などの可能性も考えられます。たとえば、就寝前の食事や脂っこいもの、多量の飲酒・喫煙、肥満などがきっかけになりやすく、これらが胃酸の逆流を起こしやすくします。
「胸やけが続く」と感じるのは、例えば「週に数回以上」「数週間〜数か月にわたる」「市販薬を使っても改善しない」といったケースが挙げられます。逆流が慢性的になると、食道・胃の粘膜が何度も酸にさらされて炎症を繰り返し、その結果バリア機能が低下します。
このような胸やけが「長く続いているな」「頻度が高いな」と思ったら注意が必要です。特に40代以上や肥満傾向、喫煙歴や飲酒量が多い方などは、放置するとリスクが高まる可能性があります。
2. 胸やけが長引くとどうなる?胃・食道への影響とは
胸やけが長期化すると、まず起きるのが食道や胃の粘膜への慢性的なダメージです。胃酸により食道下部が何度も攻撃されると、正常な食道粘膜が胃腸のような細胞に置き換わる バレット食道が発生することもあり、これは食道がんのリスク因子とされています。
また、胃への影響としては、胃のむかつき・もたれ・痛みなどの症状を伴って慢性胃炎を引き起こす場合もあります。粘膜が慢性的に刺激を受けることで胃の萎縮が進んだり、粘膜の修復が追いつかずに胃がんのリスクが高まります。 例えば、ピロリ菌陽性の場合、胃がんの発症リスクはかなり上がることが報告されています。
つまり、胸やけを「ただの胃酸過多」と見逃してしまうと、食道・胃の粘膜が少しずつ傷んでいき、結果的に重大な疾患の芽を育ててしまう可能性があります。特に続く胸やけは、身体からの警告サインとも言えます。このような観点から、胸やけが継続的・反復的である場合には、早めの専門相談が望まれます。
3. 胃がんとの関係—続く胸やけはリスク要因?
さて、「胸やけ」と「胃がん」、この2つの関連性を具体的に見てみましょう。まず、胃がんの最も重要なリスク因子として、ヘリコバクターピロリ感染と胃粘膜の萎縮・腸上皮化生が挙げられています。ある報告ではピロリ菌感染と萎縮を有する人では、健常胃の人に比べて胃がん発症リスクが 約9倍 にも達したことが示されています。 また、除菌治療を受けた後も、既に萎縮が進んでいるケースでは発症リスクが残るというデータもあります。
胸やけが胃癌発症のサインになりうるか、に関しての明確な因果は確立されていません。ですが、胸やけを引き起こすような背景(逆流症状・胃酸過多・胃炎・萎縮など)が胃がんへのリスクを高めるという見方をすることができます。
そのため、次のようなケースでは胃がんリスクも併せて検討する必要があります
- 胸やけが頻繁(週数回以上)・長期間(数ヶ月以上)続いている
- 胃もたれ・上腹部不快感・食欲低下・体重減少が併存している
- 胃炎・萎縮・胃潰瘍などの既往歴がある・またはピロリ菌陽性であった
- 家族に胃がんの既往がある
こうした背景のある方は、胃がん予防・早期発見の観点から、胃カメラ検査など専門的なチェックを考えるべきです。東京新宿RENACLINICでは、このようなリスクのある方に対して、胸やけ・胃炎・萎縮の進行度合いの確認および胃がん早期発見のための検査のご相談をお受けしています。
4. 胸やけを放置しないための日常ケア・受診のタイミング
胸やけを「我慢できるから」と放置すると、症状が慢性化・再発化してしまう恐れがあります。そこで日常生活でできるケアと、受診すべきタイミングを整理しましょう。
日常ケアのポイント
- 食事後すぐに横にならない:食後2〜3時間は体を垂直に保つと逆流を防ぎやすいです。
- 脂っこい物・刺激物・アルコール・カフェインの摂取を控える:これらは胃酸分泌を増やしたり、逆流を促したりします。
- 睡眠時に頭部を少し高くする:枕を少し高めにして、上体を傾けた状態で寝ることで逆流が起きにくくなります。
- 適正体重を維持する:肥満や内臓脂肪過多は腹圧を高め、逆流を起こしやすくなります。
- 禁煙:タバコは逆流を助長し、粘膜ダメージも強めます。
受診を検討すべきタイミング
次のような場合には、専門クリニックでの受診が望まれます
- 胸やけが週2〜3回以上・数週間以上続く

- 胃もたれ、上腹部痛、食欲低下、体重減少など併存する
- 胸やけ用の市販薬を使用しても改善が見られない
- 吐き気、嘔吐、黒い便、血液の混ざった吐血・下血などの症状がある
- 家族に胃がん・食道がんの既往がある
まとめ
胸やけが頻発・長期化するということは、胃酸の逆流や胃・食道粘膜のダメージが積み重なっているサインかもしれません。そして、その背景には胃がん発症に関わるリスク要因が潜んでいる可能性があります。もちろん、胸やけ=即「胃がん」というわけではありませんが、「胸やけがなんだか長く続くな」と感じたら、一度専門医のチェックを受けることが安心への第一歩です。東京新宿レナクリニックでは、胸やけの原因精査から胃がんリスク評価までトータルでサポートしております。どうぞお気軽にご相談ください。
監修医師 大柄 貴寛
国立弘前大学医学部 卒業。 青森県立中央病院がん診療センター、国立がん研究センター東病院大腸骨盤外科など、 日本屈指の高度な専門施設、クリニックで消化器内視鏡・外科手術治療を習得後、2024年東京新宿RENA CLINIC開院。
参考文献
- Helicobacter pylori Treatment and Gastric Cancer Risk Among Individuals With High Genetic Risk for Gastric Cancer – Zheng et al., JAMA Network Open.
- Risk of gastric cancer in Helicobacter pylori infection in a 15-year follow-up – Kamangar et al., Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention.
- The Risk Factors of Gastric Cancer – Park et al., Journal of Gastric Cancer 24


