妊娠中の痔、どうしたらいい?つらい痛み・出血への対処法と予防策

COLUMN コラム

妊娠中の痔、どうしたらいい?つらい痛み・出血への対処法と予防策

投稿日: 2025.10.24 更新日: 2025.10.27

妊娠中、おなかの成長とともにお尻の違和感を感じたことはありませんか?

「トイレで肛門がヒリヒリする」「便をすると出血する」「お尻がむくんで痛い」

これらは実は妊娠中の痔(痔核・肛門周囲静脈の腫れ)が原因で起こることが多いトラブルです。

妊娠中はホルモン変化、子宮による下半身への圧迫、便秘など複数の要因が重なって、痔になりやすくなります。

しかし、だからといって放置するわけにはいきません。痛みや出血が続くと日常生活の質が落ちるだけでなく、重症化するリスクもあります。

このブログでは、妊娠中の痔の原因、予防・日常でできる対処法、そしてどうしてもつらいときに考えられる医療的対応、の順に解説していきます。ぜひ参考にしてください。

 

目次

  1. 妊娠中に痔になりやすい理由とメカニズム
  2. 日常でできる予防とセルフケア法
  3. 痛み・出血がつらいときの対応と受診の目安
  4. 治療選択肢:保存治療から手術治療まで
  5. 妊娠後期〜出産後・産後のケアと注意点

1. 妊娠中に痔になりやすい理由とメカニズム

妊娠中に痔が起こりやすくなる背景には、複数の要因が重なっています。以下に代表的なものを挙げます。

ホルモン変化と血管拡張

妊娠するとプロゲステロンなどのホルモンが増加し、血管の緊張が緩みやすくなります。これによって肛門周囲の静脈が膨らみやすくなり、痔核が発生・悪化しやすい環境になります。

下半身への圧迫と静脈還流障害

子宮が大きくなると骨盤内の血管や静脈が圧迫され、肛門部の静脈還流が悪くなりやすくなります。このうっ血が痔を誘発、また既存の痔を悪化させる要因になります。

便秘・排便時の過度ないきみ

妊娠中は便秘になりやすい時期です。便が硬くなったり、排便時に強いいきみをかけることで、肛門への負荷が増して痔を悪化させます。実際、妊娠中の便秘と肛門周囲症状(痔を含む)は関連性が報告されています。

過去の痔や出産経験

過去に痔の既往がある人や、以前の出産で痔を経験した人は、再発リスクが高いという報告があります。周産期や分娩操作なども影響因子として挙げられています。

その他の因子

長時間の立ち仕事・座位、重労働、肥満、増えた体重なども静脈うっ血を助長します。妊娠中はこれらのリスク因子が重なりやすいため、痔が現れやすい状態になるのです。

2. 日常でできる予防とセルフケア法

「妊娠中 痔 どうしたらいいか」の基本はまず、日常生活でできる予防とケアをしっかり押さえておくことです。

食事で便をやわらかく保つ

  • 食物繊維(野菜、果物、海藻、イモ類、全粒穀物など)を意識的に摂る
  • 水分をこまめにとる(目安は妊娠中も1.5~2 L/日程度。ただし体調・むくみなどを見ながら)
  • 発酵食品や乳酸菌(ヨーグルトなど)で腸内環境を整える
  • 食後の歩行・軽い運動も便通促進に有効

排便習慣の見直し

  • 便意を感じたら我慢しない
  • 長時間のトイレ滞在を避ける
  • 足台(フットスツールなど)を使って便座での姿勢を改善
  • いきみをかけすぎないよう、排便コントロール(排便補助剤や軟便剤の使用は医師判断で)

温かい坐浴(ぬるま湯浴)

排便後や痛みを感じた際に、ぬるめのお湯(約38〜40℃)で10分程度の坐浴を行うと、血流促進・緊張緩和の効果が期待できます。肛門まわりの血行改善につながります。

体位・運動・姿勢の工夫

  • 長時間の立ち仕事や座り仕事を避け、適度に動く
  • 重いものを持つときは腹圧をかけすぎないように
  • 仰向け時や立ち上がるときの動作に注意し、肛門部に負荷をかけないように
  • 骨盤底筋・肛門周囲筋の軽い運動(強く張らない範囲で)

外用・坐剤・緩和用薬の使用

妊娠対応の肛門用軟膏や痔用坐剤を使用することもあります。ただし、薬剤の使用は医師判断が必要です。使用可能な成分や濃度には制限があるため、処方・販売薬を用いる際には妊娠であることを伝えて選択してもらいましょう。

3. 痛み・出血がつらいときの対応と受診の目安

痛みや出血が強い、長引く場合は、受診を検討していただきたい段階です。以下の点をチェックしながら、適切に対応・受診判断を行います。

症状チェックのポイント

  • 出血の量や頻度:トイレットペーパーに少量の鮮血、あるいは便に帯血混ざる程度なら比較的軽症
  • 激しい痛み、腫れ、脱出(痔が外に出て戻らない・戻すのが困難)
  • 血栓性外痔(突然硬く痛いしこり)
  • 貧血症状(めまい、倦怠感など)を伴う出血量
  • 症状が数日以上続く、改善傾向がない
  • 排便困難が著しい、日常生活に支障がある

特に、妊娠中に高度出血を来たした内痔核の症例報告もあります

一時的な対処法(痛み・腫れ緩和)

  • 冷湿布や氷水タオル:腫れ・痛みを和らげる
  • 坐浴と交互浴(温冷療法)
  • 安静にして腹圧をかけない
  • 軟便化剤(医師指示)や緩和用薬
  • 外用ステロイド(低強度・妊娠対応品)を用いることもありますが、使用可否は慎重に判断が必要です

受診・相談のタイミング

以下のような場合は早めに専門医を受診すべきです

  • 出血量が多い、繰り返す
  • 激しい痛み・腫れ・しこりがある
  • 脱出して戻らない
  • 貧血所見が出ている
  • 日常生活に支障をきたす

どうしたらいいか迷うときは、早めに東京新宿レナクリニックにご相談ください。診察・必要に応じて超音波、視診・指診で状況を確認し、安全な治療方針を提案いたします。

4. 治療選択肢:保存治療から手術治療まで

妊娠中・産後の痔には、軽症~中等症では基本的に保存治療(非手術)が優先されますが、状況に応じて手術治療を検討するケースもあります。

保存治療(第一選択)

  • 生活習慣改善:前述の予防・セルフケア
  • 外用剤・坐剤:痛み・炎症・腫れを抑える薬剤
  • 緩便剤、軟便化剤
  • 血行改善薬、漢方薬(妊娠適応なもの)
  • 漢方坐薬等
  • 緊急時以外は手術を先送りにする方針が一般的

手術治療の検討

保存治療で改善しない、血栓性痔核、出血・貧血合併例などでは手術を検討することがあります。ただし、妊娠中の手術には母体・胎児の安全性を慎重に考慮しなければならないため、慎重な判断が必要です。

妊娠後期・産後手術

多くの場合、妊娠中は保存治療を行い、出産後、体調が安定してから手術を行う方が安全かつ確実な方法とされます。

出産後はホルモン負荷や圧迫が軽減され、手術適応がより広がります。東京新宿RENA CLINICでも、まずは保存治療を原則とし、症状に応じて慎重に治療方針を検討いたします。

5. 妊娠後期〜出産後・産後のケアと注意点

妊娠後期から出産、産後にかけても、痔への配慮とケアは継続して重要です。

出産時の配慮

  • 出産時のいきみは肛門に強い負荷をかけるため、分娩指導や呼吸法でいきみをコントロール
  • 会陰切開・会陰縫合時には肛門への配慮を行う施設を選ぶ
  • 分娩後早期からの起き上がり・歩行、便通促進が術後・分娩後痔の悪化防止につながる

産後の便通ケア

  • 出産後も便を柔らかく保つ(食物繊維・水分・適度な運動)
  • 授乳・育児中は水分補給を欠かさない
  • 産後の貧血予防(鉄剤含めた栄養管理)

 

痔のフォローアップと治療評価

  • 産後数か月経過した時点で症状の改善具合を評価
  • 保存治療で改善しない場合、手術適応を検討
  • 産後の体調変化・ホルモン変動を見ながらケアを進める

まとめ

妊娠中の痔は、ホルモン変化・子宮圧迫・便秘など複数の要因が重なって起こりやすく、「妊娠中 痔 どうしたらいいか」は多くの妊婦さんが直面する悩みです。

まずは食事・排便習慣・姿勢改善・坐浴など日常のセルフケアをしっかり行うことが基本です。痛みや出血が強い、長引く場合は早めに受診・相談が必要です。

保存治療を優先しつつ、妊娠中の手術は慎重な判断が求められます。出産後には体への負荷が変わるため、再評価と治療機会を見極めることが重要です。

症状に合わせて適切な治療法を選ぶことが、妊娠・出産を安全に、快適に過ごす鍵になります。

東京新宿レナクリニックでは、妊娠中から産後まで、一貫したサポートと安全な治療をご提供しております。

 

監修医師   大柄 貴寛
国立弘前大学医学部 卒業。 青森県立中央病院がん診療センター、国立がん研究センター東病院大腸骨盤外科など、 日本屈指の高度な専門施設、クリニックで消化器内視鏡・外科手術治療を習得後、2024年東京新宿RENA CLINIC開院。

参考文献

  1. Poskus T. et al. “Preventing hemorrhoids during pregnancy: a multicenter, randomized clinical trial.” BMC Pregnancy & Childbirth 22, 374 (2022).
  2. Perianal Diseases in Pregnancy and After Childbirth (DB et al.) “Perianal Diseases in Pregnancy and After Childbirth: Frequency, Risk Factors, Impact on Women’s Quality of Life and Treatment Methods.” PMC (open access). 
  3. Ligasure hemorrhoidectomy in pregnancy (Picciariello et al.) “Comparision of Ligasure hemorrhoidectomy and conservative treatment for thrombosed external hemorrhoids (TEH) in pregnancy.” BMC Surgery.
  4. Meta‑analysis surgical vs conservative in hemorrhoids “Comparison of efficacy and safety between surgical and conservative treatments for hemorrhoids: a meta‑analysis.” BMC Gastroenterology.
  5. Treatment of haemorrhoids in pregnancy: a retrospective review  “Treatment of haemorrhoids in pregnancy: A retrospective review.” PubMed abstract
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