「あれ、なんだか股のあたりにぽこっと出っ張りが…？」

そんな違和感を感じていても、痛くないからとつい放置してしまう方も多いのが鼠径ヘルニアです。ですが「痛くないから大丈夫」と放っておくと、思わぬトラブルを招く可能性があります。今回は鼠径ヘルニアを放置したらどうなってしまうのか、をテーマに、どんな症状が起こり得るか、なぜ早めの対処が重要かを、わかりやすく解説していきます。

 

目次

1. 鼠径ヘルニアを放置するとどうなる？基本的なリスクとは
2. 放置によって進行するケースと症状の変化
3. 緊急手術や合併症の可能性—放置による重大なリスクとは
4. いつ相談すべき？早期対応のメリットと東京新宿レナクリニックでできること
5. まとめ

1. 鼠径ヘルニアを放置するとどうなる？基本的なリスクとは

鼠径ヘルニアとは、腹腔内の内容物（腸管や脂肪など）が鼠径部から出てくる状態を指します。放置した場合、以下のような基本的なリスクがあります。

まず初期は軽い違和感・ぽこっとした出っ張りだけということも多く、痛みはそこまで強くありません。しかし時間が経つほど、出っ張りが大きくなったり、重さや引きつれ感が増えたりすることがあります。

また、急に状態が悪化する危険性もあります。出てきた腸や脂肪が戻らなくなったり、血流が閉ざされてしまうと、腸閉塞や壊死といった非常に重篤な『嵌頓』という事態を招くことがあります。

ヘルニアの大きさが増したり、慢性的な突出により癒着が起こったりすると、手術時のリスクや入院期間・術後回復が長くなるケースもあるため、手術を検討するタイミングが遅くなると、費用・術後負担ともに増す可能性があります。

以上のように、軽症であっても放置していても安心とは言い切れません。次項では、具体的にどのように症状が変化していくかをご紹介します。

2. 放置によって進行するケースと症状の変化

鼠径ヘルニアをそのままにしておくと、時間とともに以下のような進行・変化が起こることがあります。

まず、出っ張りの大きさ・感じ方の変化です。初期は「立った時だけぽこっと出る」「押すと戻る」といった可動性の高い状態かもしれません。しかし、放置していると突出部分が大きくなったり、戻りにくくなってきたり、戻らなくなる「嵌頓（かんとん）」という状態になるリスクも上がります。

次に、症状の自覚変化が挙げられます。軽い違和感や微かな痛みだったものが、しゃがむ・咳をする・重い荷物を持つ際に「ひきつる感じ」「お腹が張る感じ」「痛くなってきた」といった症状を伴うようになることがあります。生活動作に制約を感じ始めると、手術を検討すべき段階に近づいていると言えます。

さらに、合併症気味の前兆が出ることもあります。鼠径部の腫れが持続したり、戻しにくくなったり、色が変わったりする場合には、腸管が血流不全を起こし始めている可能性が出てきます。特に高齢者・持病のある方では、こうした進行状態が早めに起こることが報告されています。

3. 緊急手術や合併症の可能性—放置による重大なリスクとは

軽いヘルニアだからと安心して放置してしまうと、思わぬ重大リスクが生じる場合があります。以下は特に注意すべき点です。

① 嵌頓・絞扼
出っ張ったヘルニアが戻らなくなり、腸管がヘルニア腔内で圧迫・閉塞されたり、血流が遮断されたりする状態が「嵌頓・絞扼」です。この状態では腸閉塞、腸管壊死、穿孔・腹膜炎など重篤な合併症に進展する可能性が高く、緊急手術が必要になることがあります。
さらに、緊急手術の場合は術後合併症・死亡率が通常の手術よりも格段に高く、例えば術中に腸管切除・腹腔鏡でなく開腹となった場合、死亡率や重篤合併症のリスクが大きくなります。

② 手術時・術後の負担増大
ヘルニアが大きくなったり、逸脱内容が複雑だったり、癒着が強かったりすると、後から手術を行う際に技術的難易度が上がることがあります。出っ張りが長期間あることで腹壁組織が変化し、手術時間・出血量・術後回復期間が延びる可能性も指摘されています。

③ QOL（生活の質）への影響
軽度のヘルニアでも、荷物を持つ・しゃがむ・立ち上がるといった動作で違和感や痛み・引きつれを感じるようになると、活動を控えるようになり、結果として運動量低下や他の症状（腰痛・下肢静脈血栓など）につながる事もあります。

東京新宿レナクリニックでは、こうした重大リスクについても丁寧にご案内し、「今すぐ手術を」というのではなく“最適な時期と方法での治療”を一緒にご検討いたします。

4. いつ相談すべき？早期対応のメリットと当クリニックでできること

鼠径ヘルニアを見つけた際、あるいは気になる症状がある際、「まだ大丈夫かな」と先延ばしにする方も少なくありません。しかし、以下のようなサインを感じたら、早めに受診を検討することをおすすめします。

相談をおすすめするサイン

• 立ったり歩いたりしたときに股のあたりが膨らむ・出っ張る感覚がある
• 押すと戻るけれど、最近戻しづらくなった／戻ってもすぐまた出てくる
• 荷物を持ったときや咳・くしゃみをしたときに痛み・ひきつれ・不快感を感じる
• 出っ張りが大きくなった気がする、または左右差を感じる
• 色が変わった・戻した後も張る感じがある・動作制限を感じる

東京新宿RENACLINICでの対応

• まずは問診・視触診・必要に応じて超音波検査で状態を確認
• 出っ張りの大きさ、可動性（戻す／戻らない）、症状の有無・程度を確認
• 患者さん一人ひとりの年齢・ご職業・併存疾患・ライフスタイルを勘案し手術が必要な場合、当クリニックで安全・確実な治療を提供（術式説明・術後フォロー・日常生活再開のアドバイス）
• 手術を急がない方向でも、「どうしても待つならこういう注意を」というフォロー体制あり

軽度だからと安心せず、気になる変化があれば早めに相談することで、将来の“緊急事態”を未然に防ぐことができます。

5. まとめ

鼠径ヘルニアを放置せず、早めに受診することで症状が軽いうちに対処し、回復も早く、将来の不安を減らすことができます。軽い違和感だからとそのままにしておく選択は、見えないリスクを抱える可能性があります。東京新宿レナクリニックでは、鼠径ヘルニアの早期発見・適切な治療をご提供しております。気になる方は、お気軽にご相談ください。

 

監修医師　　　大柄　貴寛
国立弘前大学医学部 卒業。 青森県立中央病院がん診療センター、国立がん研究センター東病院大腸骨盤外科など、 日本屈指の高度な専門施設、クリニックで消化器内視鏡・外科手術治療を習得後、2024年東京新宿RENA CLINIC開院。

参考文献

• Fitzgibbons RJ et al. Long-term results of a randomized controlled trial of a nonoperative strategy (watchful waiting) for men with minimally symptomatic inguinal hernias. JAMA. 2006;296(3):328–336.
• Hwang MJ, Bhangu A, Webster CE et al. Unintended consequences of policy change to watchful waiting for asymptomatic inguinal hernias. Ann R Coll Surg Engl. 2014;96(5):343–347.
• Piltcher-da-Silva R, Sasaki VL, Bettini LF et al. Outcomes of Emergency Groin Hernia Repair in the Elderly: A Systematic Review. J Abdom Wall Surg. 2023;2:11246.
• de Groot B, et al. Evaluating the Natural History of Groin Hernia from an “Unplanned” Watchful Waiting Strategy. J Clin Med. 2023;12(12):4127.
• Purkayastha S, Chow A, Athanasiou T et al. Inguinal hernia. BMJ Clin Evid. 2008;0412.