「最近、なんだか下痢が続いてる…これってただの過敏性腸症候群?それとも怖い病気のサイン?」――そんなふうに悩んだことはありませんか。下痢や便通は、軽い腸の不調で済むこともありますが、実は大腸癌 の初期症状として現れることもあるのです。とはいえ、「ただ下痢してるだけ=大腸がん」というわけではありません。今回は「下痢が続くときに気をつけるべきこと」「過敏性腸症候群と大腸がんの違い」について、読みやすく解説します。ぜひ、腸のサインを見逃さないための参考にしてください。
目次
- 過敏性腸症候群(IBS)とは?下痢型・便秘型の特徴
- 大腸癌による下痢・便通変化のサインと仕組み
- 「下痢→過敏性腸症候群?それとも大腸がん?」受診すべきタイミング
- 日常でできるチェック&予防ポイント
- まとめ
1. 過敏性腸症候群(IBS)とは?下痢型・便秘型の特徴
過敏性腸症候群(IBS)は、腸に明らかな構造的な異常が見つからないにもかかわらず、腹痛・下痢・便秘・便の形状変化・ガス・残便感などの症状が持続または反復する状態を指しま

す。 若年〜中年層で発症し、ストレス・食事・ホルモン変動・腸内環境の乱れなどが関与しています。たとえば「下痢が続いたり便秘に移ったりを繰り返す」「便を出したあとまだすっきりしない」「お腹が張った感じ・ガスが多い」といった症状が見られます。IBSは腸そのものの“機能”が乱れている状態であって、がんのように腸壁に腫瘍ができているわけではありません。つまり、生命予後に重大な影響を及ぼすことは通常ありません。
このように、下痢を繰り返すという点ではIBSがまず頭に浮かびやすいですが、“機能性”と“器質的(構造的)異常”という違いを理解することが、次節でお話しする大腸がんとの違いを知るうえで非常に重要になります。
2. 大腸癌による下痢・便通変化のサインと仕組み
大腸癌は、腸粘膜に発生したポリープなどが進行して腫瘍化したものです。進行すると腸の通過障害や粘膜の出血、腸の機能低下を引き起こし、便通異常として「下痢」「便秘」「便の形状変化(細くなる・鉛筆状)」「血便」などが現れます。
具体的には、次のようなメカニズムが関与しています。
- 腫瘍が腸内壁を狭めることで便の通過が遅れ、便秘傾向になる。
- 腸通過が遅れた後、一気に腸内容物が動くと下痢様排便になる。
- 腫瘍部から微量出血が起きている場合、鉄欠乏性貧血を伴い、体重減少・疲労感も出ることがあります。
なお、便通異常だけで大腸がんと断定できるわけではありませんが、症状が数週間以上続く・血便・体重減少・貧血などの症状がある場合には検査を検討すべきです。
このように、下痢や便通変化という点でIBSと大腸がんは重なりがありますが、発症の背景・症状の出方・リスクの高さに明確な違いがあります。
3. 「過敏性腸症候群?それとも大腸がん?」受診すべきタイミング
受診・検査をおすすめするサイン
- 便通の変化(下痢・便秘・交互に起きる)が 4〜6週間以上続く
- 血便・黒っぽい便・便に明らかな鮮血が混じる
- 体重が意図せず減る・疲れやすい(貧血の可能性)
- 「便を出し切れない感じ/残便感」が続く
- 鉛筆状の細い便や、便が細くなる傾向が見られる
- 50歳以上、または家族歴・過去に大腸ポリープ・炎症性腸疾患がある
このような症状がある場合、 東京新宿レナクリニックでは、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を含む詳しい検査を早めにご案内しています。検査に抵抗がある方も多いですが、鎮静剤を使い眠ったまま検査を行っておりますので、お気軽にご相談ください。
4. 日常でできるチェック&予防ポイント
下痢や便通変化を観察しつつ、腸を守るための日常習慣も欠かせません。以下のポイントを押さえておきましょう。
下痢・便秘のサイクルをつかむ
- 便の回数・形状(ブリストル便形状チャート)・色・時間帯をメモすると変化に気づきやすい。
- 下痢 → 便秘と交互になる場合は、腸内通過が不安定になっている証拠です。IBSでは“通りがよくなると痛みが和らぐ”こともありますが、大腸がんでは慢性的に続くことが多いとされます。
食事・生活習慣の見直し
- 食物繊維・水分を十分に摂る。食物繊維が少ないと便通が滞りやすく、腸内環境が悪化し、便通異常を助長します。

- 過度のアルコール・喫煙・塩分・加工肉の多い食事は大腸がんのリスクファクターです。定期的な運動・適正体重の維持も重要です。
ストレス・睡眠・腸内環境
- 腸と脳は密接につながっており、ストレス・睡眠不足・不規則な生活はIBSを悪化させやすいです。
- 腸内細菌叢(マイクロバイオーム)の乱れが、下痢型・便秘型IBSや大腸がんリスクとも関連しており、適切な腸内環境づくりが注目されています。
早期発見・定期検診
- 40〜50歳以上、家族歴・ポリープ歴・炎症性腸疾患などがあれば、定期的な大腸カメラを検討しましょう。
- 便通変化が数週間続く・異常症状がある場合は、自己判断せず消化器専門医へ相談しましょう。
こうした対策を日常に取り入れることで、便通異常を「ただのトラブル」で済ませず、必要な検査へつなげることができます。
まとめ
下痢が続いたり、便秘と下痢を繰り返したりする状態は、 過敏性腸症候群(IBS)によることが多いものの、 大腸癌のサインである可能性も否定できません。IBSは機能性の腸トラブルで生命に関わることは基本的に少ないですが、大腸がんは構造的な腸壁の異常です。血便・体重減少・便の細さ・持続する変化などがある場合、早めに検査を受けることが大切です。日常では便の形状・回数・色などを意識しつつ、食事・水分・運動・腸内環境・ストレス・睡眠を整えていきましょう。 東京新宿RENA CLINICでは、便通異常に対してIBS・大腸がん両方の観点から、丁寧な診断と必要な内視鏡検査をご案内しております。安心してご相談ください。
監修医師 大柄 貴寛
国立弘前大学医学部 卒業。 青森県立中央病院がん診療センター、国立がん研究センター東病院大腸骨盤外科など、 日本屈指の高度な専門施設、クリニックで消化器内視鏡・外科手術治療を習得後、2024年東京新宿RENA CLINIC開院。
参考文献
- Siegel RL et al. “Colorectal cancer statistics, 2023.” CA: A Cancer Journal for Clinicians
- Brenner H et al. “Colorectal cancer.” Nature Reviews Disease Primers, 2017.
- Naotaka Tashiro et al. “Constipation and Colorectal Cancer Risk: The Fukuoka Colorectal Cancer Study.” Asian Pacific Journal of Cancer Prevention, 2011.
- “Association between irritable bowel syndrome and colorectal cancer: a nationwide population-based study.” Vangala et al., European Journal of Internal Medicine, 2013.
- “Stool pattern is associated with … colon adenomas.” Matsumoto et al., BMC Microbiology, 2021.


