
「なんとなくおなかが張る」「食べてもすぐ満腹になるような感じ」「ガスがたまってパンパン」――そんな“おなかの張り”を、皆さん経験されたことがあるかもしれません。
通常は胃腸の動きや食生活・便通の影響で起こることも多いのですが、時には少し注意が必要なサインであることも。
特に「いつもと違う」「長く続く」「他の症状もある」などのケースでは、もしかすると大腸の病気、ひいては大腸がんという可能性を考える必要があります。
今回は、「おなかの張り」と「大腸がん」の関係に焦点をあて、受診を検討すべきポイントを、東京新宿レナクリニックの視点から分かりやすくお伝えします。
目次
- おなかの張りってどんな状態?原因とメカニズム
- おなかの張りが「大腸がん」と関係するの?
- こんなときには要受診!サインと早期発見のために
- 受診したらどう調べる?問診・検査・流れの解説
- まとめ:張りに「慣れる」前にチェックを
1. おなかの張りってどんな状態?原因とメカニズム
「おなかの張り」とは、例えば食後に胃腸が膨らんだような感じ、ガスがたまって摩擦感・重さを感じる、ものを少ししか食べていないのにおなかがいっぱいに感じる、便が出にくい・便が硬
い・頻繁にゲップ・おならが出るなどの症状を指します。
原因としては、消化管内のガス貯留、胃腸運動の低下、便通異常、食事内容や食べ方・ストレス・睡眠・運動不足など様々です。
一方で、「張り」が慢性的・反復的・増悪傾向にある場合、単なる機能的な胃腸の問題だけでなく、消化管の構造的変化(腫瘍・ポリープ・狭窄・炎症)を疑う必要があります。
例えば、腸の一部が狭くなって便やガスの通過が悪くなると、行き場を失ったガスや内容物がたまり「張る」感覚を生むことがあります。
さらに最近の研究では、膨満感が消化器系疾患全体ではがんや炎症性腸疾患などのリスク指標になりうる、という報告も出ています。
ただし、張り=大腸がんというわけではなく、非常に多くの原因があり、まずは日常生活の見直しから始めることが現実的です。
そのうえで、「張りの質」「他の症状との組み合わせ」「持続期間」などをチェックすることが重要です。
2. おなかの張りが「大腸がん」と関係するの?実際の証拠・注意点
「おなかの張り (=腹部膨満感・ガス・張り感)」が大腸がんの典型的なサイン、というわけではありませんが、“あっておかしくない”サインとして医学界でも認識されています。
特に「張り+便通の変化」「張り+血便」「張り+体重減少・疲労」などの複数の症状が併存する場合には注意度が高まります。
他にも、次のような注意すべきパターンがあります
- 張りが 新たに出現 し、数週間以上続く
- 張りに加えて便通の 変化(便秘・下痢・交互) がある
- 張りに 血便/黒色便、体重減少、鉄欠乏性貧血、持続する腹痛 などが併存
- 食生活の改善・便通改善・運動・ストレス対策をしても張りが 改善しない
こうした場合には、早めに消化器専門の受診を検討することが望まれます。重要なのは「張り」だけではなく、他の“警戒サイン”と併せて見ることです。
3. こんなときには要受診!サインと早期発見のために
「おなかの張り」のみで慌てる必要はありませんが、以下のようなサインがあるときは、受診を検討すべきと考えられます。
- おなかの張りが 1か月以上続く、あるいは 明らかに増強している
- 張りとともに 便通の変化(便秘・下痢・便の細長化・回数の増加・残便感)が出ている
- 張り+ 血便・黒色便・タール便 がある、または便に 粘液の混伴 がある
- 張り+ 原因不明の体重減少・ 貧血症状・ 食欲低下・ 夜間発汗 など全身症状がある
- 食生活・運動・便通改善などをしても 改善が乏しい、あるいは 張りが悪化している
東京新宿RENA CLINICでは、上記のサインがある方には、まず事前の問診や身体診察・血液検査を行い、その後、必要に応じて大腸内視鏡検査をご案内しています。
4. 受診したらどう調べる?問診・検査・流れの解説
受診を決めたら、「何を」「どのように」調べるかを知っておくと安心です。ここでは、一般的な流れと、東京新宿レナクリニックが特に重視しているポイントを交えてご紹介します。
問診・既往歴
まず、張りが いつから・どのようなタイミングで・どんな頻度で起きているかを確認します。具体的には
- 食後いつ頃張るか、どれくらい時間が続くか
- 便通状況(便の形・色・回数・残便感・切迫感)
- 血便・黒色便・粘液便の有無
- 体重変化・食欲・疲れやすさ・夜間症状
- 飲酒・喫煙・家族歴(特に大腸がん)
- 過去のポリープ・胃腸疾患・炎症性腸疾患(IBD)など
この段階で「張り+便通異常+血便」など複数の要注意サインがあると、内視鏡検査を比較的早期に検討します。
身体診察・初期検査
次に身体診察では、必要に応じて腹部触診・聴診・X線検査・血液検査(貧血・炎症反応など)を行います。貧血・炎症値異常があると内視鏡検査の優先度が上がる傾向にあります。
大腸内視鏡
張り+要注意サインがある場合、最も確実な検査は大腸内視鏡です。ポリープ・早期がん・出血源・狭窄などを直接観察・組織採取できます。症状だけでは予測精度が十分とは言えないという報告もあり、症状が長引く場合はこうした検査の検討が重要です。
診断・治療方針
検査結果に応じて、「ポリープあり→切除」「がん疑い→さらに精密検査・専門紹介」「異常なし/機能的張り→生活指導・便通改善」などの対応を決めます。
5. まとめ:張りに「慣れる」前にチェックを 東京新宿レナクリニックでは
お腹の張りには便通の異変や腸内環境の変化・腫瘍の存在といった比較的まれながらも重要なサインが潜んでいることがあります。特に「長く続く張り」「便通変化・血便・体重減少などの併存」がある場合には、早めに相談・検査を検討することが安心につながります。張りを“日常”とあきらめず、まずは一歩踏み出して、チェックしてみませんか。東京新宿レナクリニックでは、いつでもご相談をお待ちしております。
監修医師 大柄 貴寛
国立弘前大学医学部 卒業。 青森県立中央病院がん診療センター、国立がん研究センター東病院大腸骨盤外科など、 日本屈指の高度な専門施設、クリニックで消化器内視鏡・外科手術治療を習得後、2024年東京新宿RENA CLINIC開院。
参考文献
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